NMB
東京科学大学 科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所(ZC研)の中瀬研究室と日本原子力研究開発機構の西原健司博士らの研究グループと共同で、将来の原子力利用シナリオのシミュレーションコードNMB4.0を開発し、同研究所HPから無償公開を行っています(https://nmb-code.jp/)。
原子力研究開発において、中心となる炉心開発、再処理、処分を含めたバックエンド技術、個別の要素技術開発は極めて重要です。しかしながら、原子力は巨大な工学体系であり、システム全体としての妥当性評価、合理化研究が重要となります。
まずは日本の将来のエネルギー戦略立案のためには各電源の長短所を定量的に評価する必要があります。特に、原子力エネルギー利用においては、将来どのような炉型や核燃料サイクルを開発し、利用すべきかを見極めるために将来予測を行い、必要となる資源、プラント規模、核燃料サイクル規模、廃棄物発生量などの物量を見積もる必要があります。近年はクリーンエネルギーとしての原子力として、再エネとの協奏など、より広域なシステムの解析の重要性が高まっています。
これまで国内では将来予測のためのシミュレーションコードはいくつか開発例がありますが、公開されておらず戦略立案に必ずしも十分に反映されてきませんでした。そこで、将来のエネルギーや原子力戦略を闊達に議論するための基盤を整備するために、東工大ZC研と原子力機構はNMB4.0を共同開発し無償公開しています。NMB4.0は高速な計算アルゴリズムを備え、様々な炉型と核燃料サイクル(燃料製造、再処理、処分など)の工程を含み、また、柔軟に組み合わせやパラメータを設定可能であり、将来想定される多くのシナリオを解析可能です。新しい革新炉なども核データなどを追加で準備すれば拡張可能です。研究開発したバックエンドの情報を入れ込み、さらに詳細な検討が可能となっています。
広くユーザー・開発者を募集し、国内外の標準シミュレーターとし、経済性や環境負荷などの評価機能の充実、他電源を含めエネルギー分野横断的な評価研究の実現に向け、研究プラットフォーム構築を目指しています。こういった研究活動と、再処理、バックエンド研究などを一貫して研究室で展開することで、真の“原子力システム研究”が可能になると考えています。
エネルギーなしには国、世界は成り立ちません。エネルギー問題解決のため、原子力の諸課題解決のため、よりよい社会の実現のために、中瀬研では幅広い研究を展開していきます。